遺品整理中に見つかった骨董品や美術品の扱い方。やるべきこととNG行為は?
遺品整理をしている最中に、価値の分からない骨董品や美術品が見つかる場合があります。「きっと高価なものではないだろう」と判断して捨ててしまったり遺品整理業者に依頼して回収してもらったりする前に、必ず行っていただきたいのが専門家による鑑定です。
一見高価には見えなくても、実は価値が高い可能性はあります。故人が大切にしていたものであればなおさら、処分する前に慎重に価値を見極め、価値に見合った対応をしたいもの。ここでは、遺品整理中に骨董品や美術品が見つかった場合、どのように対応すればよいかをご紹介します。故人の残した遺品を大切にするとともに、家族にとっても一番良い方法を考えていきましょう。
そもそも骨董品や美術品とはどのような物を指す?
個人宅に置かれている骨董品や美術品で特に多いのが次のような物です。
時計、コイン、古切手、アクセサリー、陶器、絵画、家具、茶道具、掛け軸、着物など
特に時計やアクセサリーなどは壊れている場合もありますが、修理をすれば価値が再生することがあります。また、コインや古切手は見ただけでは価値が分からないことが多いものですが、専門家であれば正確に価値を見極めてくれるはずです。
家具もまた、アンティーク品であれば価値が高くなります。傷が入っていたとしても、価値が認められるものが多いので、素材がしっかりとしている家具であれば処分の前に鑑定を依頼することをおすすめします。
誰に査定を依頼すればいい?
一般的な買取り品となる遺品と、価値が高いかもしれない遺品とで査定先を使い分けましょう。
家具・家電など一般的な買取りが期待できるもの
通常の家電や家具の場合は、専門業者ではなく古物商許可証を取得している遺品整理業者に依頼すると、一括で査定して回収まで行ってくれるので手間がありません。査定して少しでも買い取りが可能な場合は、遺品整理の料金に充てることもできます。
リサイクルショップでも買い取りを行ってくれますが、出張買取の場合は別途出張費や搬出費用などで買取額が低くなることがあるので、遺品整理業者に依頼するのがおすすめです。
価値が分からない骨董品や美術品
骨董品や美術品の鑑定は、遺品整理業者ではなく専門の美術品鑑定士などに依頼しましょう。遺品整理業者でも査定を行ってくれる場合がありますが、価値を正確に把握できていないことがあります。また、中には悪質な業者もあり、価値が分かった上で処分品として持ち帰ってしまうケースがないとも言えません。専門的知識があり、信頼できる鑑定士へ依頼するのが安心です。
遺品の価値が高いと分かった場合
骨董品や美術品などの鑑定を依頼した結果、価値が高いと分かった場合、まず気をつけなければいけないのが「相続」です。相続財産は、現金や不動産などと同様に相続人で話し合って分配しなければ、後々トラブルに発展することがあります。
また、数百万、数千万円の価値があると評価された相続財産を相続する場合、他の相続財産とあわせて相続税が課税される場合もあります。
相続税がかかるケース
相続財産の総額が基礎控除額に収まる場合は、相続税はかかりません。
基礎控除額は、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」という計算式で求められます。つまり、相続人が一人なら3,600万円、二人なら4,200万円までは相続税がかかりません。
逆に言えば、相続財産の総額がこれを超える場合は相続税がかかるため、相続税の申告が必要になります。
「売買実例価額」と「精通者意見価格」
骨董品や美術品の価値を評価する方法には、大きく分けて「売買実例価額」と「精通者意見価格」の二つがあります。売買実例価額とは、中古市場で売買されている金額のことで、精通者意見価格とは、その物に精通した専門家が査定した金額のことです。
相続財産の場合は、実際の価値と評価額が一致しているが最も重要です。なぜなら、実際の価値より高く評価されれば相続税が高くなり、低く評価されれば、後々税務署の調査が入った場合に「価値が低く算出されている」を見なされれば追徴課税が課されるからです。
特に高価な一点ものの場合は中古市場に出回っていないことが多いため、売買実例価額ではなく精通者意見価格をもとに評価されることになります。そのため、査定を依頼する場合は、正確に価値を評価してくれる専門家に依頼することが大切です。
なお、買い取ってもらえるだけの価値はあるものの、一般的な家電などと価値が変わらない場合は、一般的には美術品としてではなく、家具や家電として一括して相続財産に含めます。
鑑定を依頼するメリット
相続財産を相続人間で平等に分配できる
遺品の価値が正確に分かれば、相続人同士で平等に遺品を分配でき、後のトラブルを防止することができます。複数の相続人で財産を分配する場合は鑑定を依頼した方が良いでしょう。
遺品の価値が正確に分かり、その後の対応が明確になる
骨董品や美術品の価値を一般の人が査定することは難しいため、価値が分からず処分して良いのかどうか判断に迷う場合は、鑑定を依頼した方が良いでしょう。価値がないと分かったとしても、その後の処分がスムーズに行えるため無駄にはなりません。
申告漏れを防ぐことができる
相続税が発生する場合は、骨董品や美術品の金額を算出し、相続税の申告をする必要があります。もし、価値のあるものだと気づかずに申告をしなかった場合でも、後に税務署の調査により価値があると分かった場合は、申告漏れとされ、修正申告と追徴課税の納付が求められます。価値があると知っていて申告しなかった場合は脱税行為と見なされるため、価値が高そうだと感じたら必ず鑑定を依頼するようにしましょう。
鑑定を依頼する際のポイント
骨董品や美術品の鑑定を依頼すると、点数に応じた鑑定料がかかります。そのため、価値が分からないからと何でも鑑定を依頼していると鑑定料が高額になってしまうことがあるため注意が必要です。最近ではメールやLINEなどから写真を送るだけで無料で査定を行ってくれる業者もあるので、試しに利用してみるのも良いかもしれません。
ただし、鑑定士にも得意分野があります。鑑定を依頼する品に対する知見が深い鑑定士に依頼することをおすすめします。故人が残してくれた財産を正しく評価し、最大限に活用するためにも、複数の鑑定士を比較し、信頼できる鑑定士を選びましょう。