
終活における法的な備えとして、しばしば比較されるのが「成年後見制度」と「遺言書」です。どちらもご自身の将来と財産を守るための重要な手段ですが、そのお目的と効力の発生時期が全く異なります。
この2つを対比させ、あなたの終活の目的や状況に合わせて、どちらの備えがより適しているかを解説します。
1.目的と効力の違いを理解する
まず、成年後見制度と遺言書の基本的な違いを理解することが、適切な備えを選ぶ第一歩です。
| 項目 | 成年後見制度(任意後見制度) | 遺言書 |
| 主な目的 | 生存中の生活・医療・財産に関する法的判断をサポートする | 死後の財産の分配方法と法的な意思を伝える |
| 効力の発生時期 | 本人の判断能力が不十分になった時(認知症など) | 本人の死亡時 |
| 対象となる財産 | 生存中のすべての財産の管理、契約、療養看護に関する事務 | 死亡時の残存財産の承継(相続) |
| 法的な手続き | 家庭裁判所への申立てと監督人の選任が必要 | 法定の方式に従った作成と検認(公正証書遺言を除く)が必要 |
| 費用 | 申立て費用、後見人・監督人への報酬(月額) | 作成費用(公正証書)、保管費用など |
2.成年後見制度が適しているケース
成年後見制度は、「自分の判断能力が衰えた後の生活」に不安がある方や、「死後の財産承継だけでなく、生前の財産管理や医療・介護の契約」を託したい場合に適しています。
✅こんな人に特におすすめ
◆認知症などで判断能力を失うリスクを備えたい方
・認知症になると、銀行での手続きや介護施設との契約ができなくなります。任意後見契約を結んでおけば、判断能力が不十分になった後も、あらかじめ選んだ後見人(財産管理を託したい人)があなたの代わりに契約や手続きを行えます。
◆財産の管理だけでなく、療養看護(介護や医療)に関する事務も託したい方
・後見人は、預貯金管理だけでなく、介護サービスの契約や、入院・手術に関する意思決定のサポートも行えます。
◆相続人がいても、財産管理の能力や意欲に不安がある方
・親族ではなく、専門家(弁護士、司法書士など)に、厳格な家庭裁判所の監督の下で財産管理を任せたい場合に有効です。
3.遺言書が適しているケース
遺言書は、「自分が亡くなった後の財産の分配」について、法的な効力を持たせて確実に実行したい場合に適しています。
✅こんな人に特におすすめ
◆法定相続分とは異なる財産の分配を希望する方
・「長男に家を継がせたい」「お世話になった人に財産の一部を渡したい(遺贈)」など、法律で決められた分け方以外の希望がある場合に必須です。
◆相続人間のトラブルを未然に防ぎたい方
・遺言書があれば、遺産分割協議が不要になるため、相続人同士の話し合いで揉めるリスクを大幅に減らせます。
◆相続人以外に財産を渡したい方
・内縁の妻や、生前にお世話になった友人・団体などに財産を渡す(遺贈する)意思がある場合。
◆家族・親族と疎遠で、相続の手続きを簡素化したい方
・相続人調査や遺産分割協議の手間を省くことができます。
4.両方準備が最強!「成年後見」と「遺言」の組み合わせ
成年後見制度は「生存中の備え」、遺言書は「死後の備え」であるため、どちらか一方だけではカバーできないリスクがあります。
終活の備えとして最も万全なのは、「両方を組み合わせること」です。
| 準備の組み合わせ | カバーできるリスク |
| 任意後見制度 | 生存中に認知症になり、財産管理や介護・医療の契約ができなくなるリスク。 |
| 遺言書 | 死亡後に財産の分け方で相続人が揉めるリスク。自分の希望通りに財産が渡らないリスク。 |
| 両方 | 認知症による生前の契約不能リスクと、死亡後の相続トラブルリスクの両方を完璧にカバーできる。 |
特に任意後見契約を結ぶ際、その契約書の中で、ご自身の死後における財産管理の事務の委託(死後事務委任契約)や遺言の執行についても定め、後見人に任せる形にしておくと、手続きがスムーズになります。
5.さいごに
終活の備えとして「成年後見制度」と「遺言書」を対比させ解説しましたが、どちらの準備を進めるか、ご自身の状況に照らし合わせて検討してみてください。










